【情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前2 問10】FIPS PUB 140-3

情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前2 問10

【出典:情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前2(一部、加工あり)】

 FIPS PUB 140-3はどれか。

ア 暗号モジュールのセキュリティ要求事項
イ 情報セキュリティマネジメントシステムの要求事項
ウ デジタル証明書や証明書失効リストの技術仕様
エ 無線LANセキュリティの技術仕様

FIPS PUB 140-3とは? セキュリティ資格取得者が知るべき暗号モジュールの国際標準

皆さん、こんにちは! 情報処理安全確保支援士やネットワークスペシャリストの資格取得を目指して日々勉強されている皆さんにとって、FIPS PUB 140-3というキーワードは非常に重要です。聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、これは暗号モジュールのセキュリティ要件を定めた国際的な標準規格です。

今回は、このFIPS PUB 140-3について、その定義から背景、具体的な事例、そして今後の動向まで、皆さんの学習に役立つよう、分かりやすく解説していきます!


FIPS PUB 140-3って、そもそも何?

FIPS PUB 140-3は、「Federal Information Processing Standards Publication 140-3」の略で、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が発行する、暗号モジュールのセキュリティ要件に関する連邦情報処理標準です。

簡単に言うと、政府機関や重要インフラなどで使われる、データを暗号化したり復号したりする機器やソフトウェア(これを暗号モジュールと呼びます)が、どれくらいのセキュリティレベルを持っているべきかを定めた「お墨付き」のようなものです。この標準に準拠していると認められた暗号モジュールは、セキュリティがしっかりしていると判断されます。


なぜFIPS PUB 140-3が必要なの? その背景と経緯

FIPS PUB 140-3の背景には、デジタル化が進む社会において、情報セキュリティの重要性が増しているという大前提があります。特に政府機関や金融機関、医療機関など、機密性の高い情報を扱う組織では、その情報が漏洩したり改ざんされたりすることを防ぐために、強固なセキュリティ対策が不可欠です。

これまでもFIPS 140シリーズは存在していましたが、技術の進化や新たな脅威の出現に対応するため、定期的に改訂が行われてきました。FIPS PUB 140-3は、その最新版であり、2019年に発行されました。前身であるFIPS PUB 140-2から、より最新の技術トレンドやセキュリティ脅威を考慮し、評価方法などがアップデートされています。


FIPS PUB 140-3が使われている具体的な事例

では、FIPS PUB 140-3は具体的にどのような場面で活用されているのでしょうか?

  • 政府機関のシステム: アメリカをはじめ、各国の政府機関が導入する情報システムでは、FIPS PUB 140-3に準拠した暗号モジュールの採用が義務付けられているケースが多々あります。これにより、国家機密や国民の個人情報が保護されます。
  • 金融機関のセキュリティ: オンラインバンキングやクレジットカード決済システムなど、金融取引の安全性を確保するために、FIPS PUB 140-3に準拠した暗号モジュールが広く利用されています。
  • VPN装置やネットワーク機器: 企業間のセキュアな通信を実現するVPN装置や、重要なデータを保護するネットワーク機器にも、この標準が適用されることがあります。これにより、データの盗聴や改ざんを防ぎます。
  • IoTデバイス: 最近では、IoTデバイスにもセキュリティが求められるようになり、FIPS PUB 140-3の適用が検討される事例も増えています。

このように、私たちの日常生活の裏側で、FIPS PUB 140-3は様々な形で情報セキュリティを支えているのです。


FIPS PUB 140-3の課題と対策

FIPS PUB 140-3は非常に重要な標準ですが、課題がないわけではありません。

課題

  • 認証取得のコストと時間: FIPS PUB 140-3の認証を取得するには、厳格なテストと評価が必要であり、多大なコストと時間がかかります。これは、特に中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。
  • 技術の変化への追従: セキュリティ技術は日進月歩であり、新たな暗号アルゴリズムや攻撃手法が日々登場します。標準が技術の変化に常に追従していくことは、容易ではありません。
  • 実装の複雑性: FIPS PUB 140-3の要件を満たす暗号モジュールを設計・実装することは、高度な専門知識を要します。

対策

  • セキュリティ専門人材の育成: FIPS PUB 140-3のような高度なセキュリティ標準を理解し、適切に実装できる人材の育成が不可欠です。まさに、情報処理安全確保支援士やネットワークスペシャリストの皆さんの出番ですね!
  • 標準化プロセスの柔軟性: 技術の進化に対応するため、標準の改訂プロセスをより迅速かつ柔軟にする必要があります。
  • オープンソースとの連携: オープンソースの暗号ライブラリやツールをFIPS PUB 140-3に準拠させることで、開発コストの削減や普及促進が期待できます。

今後のFIPS PUB 140-3の動向

FIPS PUB 140-3は、今後も情報セキュリティの基盤としてその重要性を増していくでしょう。

  • クラウド環境への対応: クラウドサービスの普及に伴い、クラウド上の暗号モジュールや、クラウドサービスと連携するオンプレミス環境の暗号モジュールに対するFIPS PUB 140-3の適用がより重要になってきます。
  • 量子コンピュータ時代への備え: 量子コンピュータの登場は、現在の暗号技術に大きな影響を与える可能性があります。NISTは既に量子耐性暗号の研究を進めており、将来的にはFIPS PUB 140-3にもその成果が反映されていくことが予想されます。
  • 国際的な連携の強化: FIPS PUB 140-3はアメリカの標準ですが、世界中で広く参照されています。今後も、他の国際標準機関との連携を深め、よりグローバルなセキュリティ基盤の確立に貢献していくでしょう。

問題の再確認

FIPS PUB 140-3はどれか。

ア 暗号モジュールのセキュリティ要求事項
イ 情報セキュリティマネジメントシステムの要求事項
ウ デジタル証明書や証明書失効リストの技術仕様
エ 無線LANセキュリティの技術仕様


解説

FIPS PUB 140-3に関する記事を読んでいただいた皆さんなら、もうお分かりですね! ズバリ、正解は「」です。

改めて、それぞれの選択肢を見ていきましょう。

ア 暗号モジュールのセキュリティ要求事項
これはまさに、これまで解説してきたFIPS PUB 140-3の定義そのものです。FIPS PUB 140-3は、暗号モジュールが満たすべきセキュリティレベルや評価方法を定めた標準規格です。

イ 情報セキュリティマネジメントシステムの要求事項
こちらは、ISO/IEC 27001などの情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格が該当します。組織全体としての情報セキュリティ管理体制について定めたものです。

ウ デジタル証明書や証明書失効リストの技術仕様
これらは、X.509(公開鍵証明書の標準)やCRL(証明書失効リスト)などのPKI(公開鍵基盤)関連の技術仕様が該当します。

エ 無線LANセキュリティの技術仕様
これは、IEEE 802.1XやWPA/WPA2/WPA3などの無線LANのセキュリティプロトコルや技術仕様が該当します。


まとめ

このように、それぞれの選択肢が指す技術や規格は全く異なります。FIPS PUB 140-3は、特に「暗号モジュール」の「セキュリティ要求事項」に特化した標準であることをしっかりと覚えておきましょう。

情報処理安全確保支援士やネットワークスペシャリストの試験では、このように特定の規格や技術の定義を問う問題がよく出題されます。今回の解説を通して、FIPS PUB 140-3への理解がさらに深まったことを願っています。

引き続き、学習を頑張ってくださいね!