ネットワーク状態変化によるスパニングツリー再構築【ネットワークスペシャリスト試験 平成30年度 秋期 午後1 問2 No.3】
ネットワークスペシャリスト試験 平成30年度 秋期 午後1 問2 No.3
【出典:ネットワークスペシャリスト試験 平成30年度 秋期 午後1 問2(一部、加工あり)】
【監視サーバの問題】
ネットワークに異常が発生した際に、監視サーバで検知できなかった問題について、システム部門のB課長は、部下のCさんに障害発生時の状況確認とネットワーク監視の改善策の立案を指示した。
【障害発生時の状況確認】
ケーブルの断線による障害発生時の構成を、図2に示す。
Cさんが行った状況確認の結果は、次のとおりである。
- 障害発生時、フロアラック1の近くでフロアのレイアウト変更が行われていた。その影響でフロアSW1のp1ポートとコアSW1のp2ポートを接続するケーブル1が断線した。同時に、フロアSW1のp3ポートとSW4を接続するケーブル2が断線した。
- ケーブル1の断線によって、④フロアSW2のp1ポートのSTPのポート状態がブロッキングから、リスニング、ラーニングを経て、フォワーディングに遷移した。また、監視サーバでは、SYSLOG監視によって、ケーブル1が接続されているポートの状態遷移が発生したことを検知した。
- ケーブル2の断線に伴って⑤フロアSW1が送信した、リンク状態遷移を示すSYSLOGメッセージが監視サーバに到達できなかった。その結果、監視サーバは、ケーブル2が接続されているポートの状態遷移を検知できなかった。
④について、BPDU(Bridge Protocol Data Unit)を受信しなくなったフロアSW2のポートを、図2中の字句を用いて答えよ。:p2
ケーブル断線によるネットワークの状態が変化する前後で、STPやBPDUがどのような動作になっているかを確認していきます。
STPやBPDUについて、「IEEE 802.1Dで規定されているSTPを用いて、レイヤ2ネットワークのループを防止している。正常時はコアSW1がルートブリッジとなるように設定している。」とあります。
ケーブル断線前は、フロアSW2ではルートブリッジであるコアSW1からのBPDUをp1とp2で受信する状態で、最終的にp1ポートがブロッキング状態となっていました。
ケーブル1の断線によりその経路からBPDUが渡ってこなくなるため、フロアSW2のp2ポートでBPDUを受信しなくなります。
その結果、フロアSW2のp1ポートがブロッキングからフォワーディングに遷移しています。
⑤について、フロアSW1が送信したSYSLOGメッセージが監視サーバに到達できなかったのはなぜか。”スパニングツリー”の字句を用いて25字以内で述べよ。:スパニングツリーが構築中だったから。
ケーブル断線に伴いSTPの状態遷移が発生したり、SYSLOGメッセージが送信されたりして状態を把握するのに混乱しがちですが、ここは落ち着いて本質となる箇所を確認しましょう。
問題だったのは、フロアSW1から監視サーバへの通信ができなかったことです。
フロアSW1から監視サーバへ通信するルートは、ケーブル1が断線していることを考慮すると、フロアSW1→フロアSW2→コアSW2→コアSW1→サーバSW→監視サーバになります。
ここで、本文に「ケーブル1の断線によって、フロアSW2のp1ポートのSTPのポート状態がブロッキングから、リスニング、ラーニングを経て、フォワーディングに遷移した。」とあり、ポート状態の遷移が動作していたことが分かります。
STPのポート状態において、フォワーディング以外の時にはデータ転送が行われません。
ブロッキングからフォワーディングになる時間は50秒程度かかり、結構長い時間がかかります。
なお、このようにネットワークの状態が変化することを再構築といい、再構築が完了して安定することを収束(convergence)と言います。
また、ケーブル1とケーブル2は同時に断線したとの記述もあり、ケーブル2の断線でフロアSW1から監視サーバへのSYSLOGメッセージの通信と、STPのポート状態の遷移が同時に発生したことが分かります。
前問であったようにSYSLOGはUDPで通信されるため、一度通信に失敗すると再送せず、そこで終了となります。
したがって、SYSLOGメッセージの通信がSTPの再構築中だったため通信ができなかったことが想定されます。