ネットワークスペシャリスト試験 令和5年度 春期 午後2 問2
【出典:ネットワークスペシャリスト試験 令和5年度 春期 午後2 問2(一部、加工あり)】
[ECサーバの増強構成の設計]
X主任は、ECサーバの増強が必要になったことを上司のW課長に報告し、W課長からECサーバの増強構成の設計指示を受けた。
ECサーバの増強策としてスケール(g)方式とスケール(h)方式を比較検討し、ECサイトを停止せずにECサーバの増強を行える、スケール(h)方式を採用することを考えた。
X主任は、②ECサーバを2台にすればECサイトは十分な処理能力をもつことになるが、2台増設して3台にし、負荷分散装置(以下、LBという)によって処理を振り分ける構成を設計した。ECサーバの増強構成を図3に示し、DNSサーバに追加する社内向けドメインのリソースレコードを図4に示す。
ECサーバ増強後、購買担当者がWebブラウザでhttps://ecsv.example.jp/を指定してECサーバにアクセスし、アクセス先が既設ECサーバに振り分けられたときのパケットの転送経路を図5に示す。
導入するLBには、負荷分散用のIPアドレスである仮想IPアドレスで受信したパケットをECサーバに振り分けるとき、送信元IPアドレスを変換する方式(以下、ソースNATという)と変換しない方式の二つがある。図5中の(ⅰ)〜(ⅵ)でのIPアドレスの内容を表2に示す。
g:アップ、h:アウト
「ECサーバの増強策としてスケール(g)方式とスケール(h)方式を比較検討し、ECサイトを停止せずにECサーバの増強を行える、スケール(h)方式を採用することを考えた。」
知識問題です。
スケールアップは、サーバのCPU交換、メモリ増設などによってスペックを向上させる方式で、一時的にサービスの停止を伴います。
スケールアウトは、サーバを増設して負荷分散することでサーバ群としての処理能力を向上させる方式で、
実装方法によりますが、サービス停止せずに適用することが可能です。
下線②について、2台ではなく3台構成にする目的を、35字以内で答えよ。ここで、将来のアクセス増加については考慮しないものとする。:1台故障時にも、ECサイトの応答速度の低下を発生させないため
「X主任は、②ECサーバを2台にすればECサイトは十分な処理能力をもつことになるが、2台増設して3台にし、負荷分散装置(以下、LBという)によって処理を振り分ける構成を設計した。」
負荷分散装置は、その名のとおり負荷を分散させるのが第一の目的ですが、複数のサーバのうち1台が故障しても残りのサーバでサービスを継続させることも目的の一つです。
まずはECサーバを2台にして処理能力不足を解消した上で、1台故障時にも継続して処理能力を維持するために3台構成にします。
i:100.α.β.2、j:192.168.1.2、k:192.168.1.4
あらためて該当する箇所を確認します。
- (ⅰ)送信元:PC、宛先:FWz
宛先IPアドレス(i)は、FWzのインターネット側のIPアドレスですが、これは既設ECサーバのNAT変換前のIPアドレスであり、表1から「100.α.β.2」となります。
- (ⅱ)送信元:FWz、宛先:LB
送信元IPアドレスはPCのまま変わらず、宛先IPアドレス(j)はFWzでNATされ「192.168.1.2」となります。
そして「192.168.1.2」はLBの仮想IPアドレスとして設定されます。 - (ⅲ)送信元:LB、宛先:既設ECサーバ
送信元IPアドレスは、LBでソースNATを行わない場合はPCのまま変わりません。
ソースNATを行う場合の送信元IPアドレス(k)は、自身の物理IPアドレスである「192.168.1.4」(←図4より)にNATします。 - (ⅳ)送信元:既設ECサーバ、宛先:LB
宛先IPアドレスは、LBでソースNATを行わない場合はPCになります。
ソースNATを行う場合の宛先IPアドレス(k)はLBでNATした物理IPアドレスである「192.168.1.4」になります。 - (ⅴ)送信元:LB、宛先:FWz
送信元IPアドレス(j)は、FWzでNATされた「192.168.1.2」となります。 - (ⅵ)送信元:FWz、宛先:PC
送信元IPアドレス(i)は、FWzのインターネット側のIPアドレスで「100.α.β.2」となります。