PKI-RA【情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前Ⅱ 問3】

情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前Ⅱ 問3

【出典:情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前Ⅱ(一部、加工あり)】

 PKI(公開鍵基盤)を構成するRA(Registration Authority)の役割はどれか。

ア デジタル証明書にデジタル署名を付与する。
イ デジタル証明書に紐づけられた属性証明書を発行する。
ウ デジタル証明書の失効リストを管理し、デジタル証明書の有効性を確認する。
エ 本人確認を行い、デジタル証明書の発行申請の承認又は却下を行う。

今回は、情報セキュリティの分野で避けては通れない「PKI(公開鍵基盤)」の中から、特に重要な役割を担う「RA(Registration Authority:登録機関)」について、わかりやすく、そして深く掘り下げて解説していきます!

「PKIって何となくは知ってるけど、RAって具体的にどんなことをしてるの?」

「CAとの違いがいまいちピンとこないんだよな…」

そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか?この記事を読めば、RAの役割がスッキリ理解でき、PKI全体の知識もグッと深まるはずです!さっそく見ていきましょう!

1.RA(登録機関)って、いったい何者?~PKIにおけるその定義~

まずは、RAの定義からしっかり押さえていきましょう。

PKI(公開鍵基盤)は、簡単に言うと、インターネットなどのオープンな環境において、安全に通信を行うための「信頼の仕組み」です。その中心には、「デジタル証明書」という電子的な身分証明書があり、この証明書によって「この公開鍵は確かにAさんのものだ」ということを保証します。

このデジタル証明書を発行するのがCA(Certification Authority:認証局)と呼ばれる機関です。

では、今回の主役であるRA(Registration Authority:登録機関)は、どこに位置するのでしょうか?

RAは、CAがデジタル証明書を発行する際に、その申請者が「本当に本人であるか」を確認し、CAへその情報を伝える役割を担っています。CAが「証明書の発行」という最終的な判断を下すのに対し、RAは「申請者の本人確認」という、非常に重要な「事前審査」を行う機関なのです。

例えるなら、CAが住民票を発行する市役所の窓口だとすると、RAは住民票を申請する人が本当に本人かどうか、運転免許証などの身分証明書を確認する担当者、といったイメージです。CAはRAが確認した情報を信頼して証明書を発行するわけですね。

2.なぜRAが必要なの?~その背景と経緯~

「CAが全部やればいいんじゃないの?」

もしかしたら、そう思われた方もいるかもしれません。しかし、PKIが普及していく中で、RAの必要性が高まってきました。その背景には、以下のような理由があります。

  • CAの負担軽減と専門化の促進
    CAはデジタル証明書の発行という非常に重要な役割を担っており、その業務は高度なセキュリティ管理が求められます。すべての申請者の本人確認までCAが行おうとすると、業務が膨大になり、セキュリティ管理が手薄になるリスクも考えられます。RAを導入することで、本人確認という作業を分離し、CAは証明書の発行に特化できるようになります。
  • 物理的・地理的な制約への対応
    CAは通常、厳重なセキュリティが施された場所に設置され、直接訪問して本人確認を行うのは難しい場合があります。そこで、ユーザーが身近な場所で本人確認を受けられるように、地域に分散してRAを設置することが可能になります。これにより、PKIサービスの利用がより便利になります。
  • 認証レベルの多様化への対応
    デジタル証明書には、個人の身元を証明するものから、企業の組織としての認証、さらにサーバー証明書のように機器の認証まで、様々な種類があります。それぞれの証明書に応じた本人確認のプロセスが必要となり、RAがその多様な認証レベルに対応できる柔軟性を提供します。

このような背景から、PKIシステムは、CAとRAが連携することで、より効率的かつ安全に運用されるようになったのです。

3.RAの具体的なお仕事を見てみよう!~RAの主な業務内容~

では、RAは具体的にどのような業務を行っているのでしょうか?主な業務内容を見ていきましょう。

  • デジタル証明書の発行申請の受付
    ユーザーからのデジタル証明書の発行申請を受け付けます。
  • 申請者の本人確認・組織確認
    申請者が本当に本人であるか、または申請している組織が実在するかなどを、身分証明書や登記簿謄本などの提出書類、あるいは対面による確認など、様々な方法で厳格に確認します。この本人確認がPKIの信頼性を支える重要な部分です。
  • 公開鍵の真正性の確認
    申請者が提出した公開鍵が、本当にその申請者によって生成されたものであるかを確認することもあります。
  • CAへの申請情報の伝達
    本人確認が完了した情報を、CAへ安全に伝達します。
  • 証明書失効申請の受付と処理
    証明書の有効期限切れや秘密鍵の漏洩などにより、証明書を失効させる必要がある場合に、その申請を受け付け、CAへ伝達します。
  • CRL(証明書失効リスト)の管理支援
    CAが発行するCRLの情報をユーザーに提供する支援を行うこともあります。
  • 鍵ペアの生成支援(オプション)
    場合によっては、ユーザーの鍵ペア(公開鍵と秘密鍵)の生成を支援することもありますが、秘密鍵の管理はユーザー自身が行うのが原則です。

このように、RAはデジタル証明書の発行プロセスにおいて、CAとユーザーの間に入り、きめ細やかなサポートと厳格な審査を行うことで、PKI全体の信頼性を高める役割を担っています。

4.RAが抱える課題と対策~安全なPKI運用のために~

RAはPKIの信頼性を支える重要な要素ですが、その運用にはいくつかの課題も存在します。

課題
  • 厳格な本人確認プロセスの確保
    不適切な本人確認は、偽の証明書発行につながり、PKI全体の信頼性を損ないます。常に最新の脅威に対応した厳格なプロセスが必要です。
  • 運用コストの増大
    対面での本人確認や書類審査など、RAの業務は人手や時間がかかります。これにより、運用コストが増大する傾向にあります。
  • セキュリティ対策の徹底
    RAが取り扱う情報は非常に機微な個人情報であり、その管理には高度なセキュリティ対策が求められます。不正アクセスや情報漏洩のリスクを常に考慮する必要があります。
  • 分散環境での整合性の維持
    複数のRAが存在する場合、それぞれのRAで本人確認のレベルや手順にばらつきが生じると、PKI全体の信頼性に影響が出る可能性があります。
対策
  • 本人確認プロセスの標準化と自動化
    本人確認のガイドラインを策定し、全てのRAで統一された基準を適用します。また、マイナンバーカードを用いた公的個人認証など、自動化できる部分は積極的に導入し、ヒューマンエラーのリスクを低減します。
  • 技術の活用による効率化
    顔認証や生体認証、ブロックチェーン技術の活用など、新たな技術を導入することで、本人確認の効率化とセキュリティ向上を両立させます。
  • 定期的な監査と教育
    RAの業務は定期的に第三者機関による監査を受け、適切に運用されているかを確認します。また、担当者へのセキュリティ教育も継続的に実施し、意識向上を図ります。
  • クラウド型RAサービスの利用
    専門の事業者が提供するクラウド型RAサービスを利用することで、自社でシステムを構築・運用する手間とコストを削減しつつ、高いセキュリティレベルを維持することが可能です。

これらの対策を講じることで、RAはより安全で信頼性の高いPKI運用に貢献することができます。

5.RAの今後の動向~新しい技術との融合~

PKIの世界は常に進化しており、RAも例外ではありません。今後のRAの動向として、以下のような点が注目されます。

  • リモートでの本人確認の高度化
    オンラインでの本人確認(eKYC: electronic Know Your Customer)技術の進化により、遠隔地にいながらも厳格な本人確認が可能になります。これにより、より利便性の高いPKIサービスの提供が期待されます。
  • ブロックチェーン技術との連携
    ブロックチェーンの分散型台帳技術は、データの改ざん耐性や透明性を高めることができます。RAが管理する本人確認情報の一部をブロックチェーンに記録することで、信頼性をさらに向上させる可能性があります。
  • IoTデバイス認証における役割の拡大
    今後、IoTデバイスの普及に伴い、膨大な数のデバイス認証が必要となります。RAは、これらのデバイスの真正性を確認し、PKIを介して安全な通信を確立する上で、重要な役割を担うことになるでしょう。
  • ゼロトラストネットワークにおける役割
    ゼロトラストの考え方では、「何も信頼しない」を前提に、常に認証・認可を行います。PKIはゼロトラストを実現するための重要な要素であり、RAはユーザーやデバイスの「信頼性」を確保する上で、より高度な認証プロセスに関与していく可能性があります。

このように、RAは単なる「本人確認機関」に留まらず、新たな技術を取り入れながら、よりセキュアで利便性の高いデジタル社会の実現に貢献していくことが期待されます。

さいごに

いかがでしたでしょうか?今回はPKIを構成する重要な要素であるRA(Registration Authority:登録機関)について、その定義から具体的な役割、課題、そして今後の動向まで、詳しく解説してきました。

PKIは、皆さんが普段利用しているWebサイトの閲覧(HTTPS通信)や電子署名など、様々な場面で私たちのセキュリティを支えています。その根幹をなすRAの役割を深く理解することは、情報処理安全確保支援士やネットワークスペシャリストを目指す皆さんにとって、非常に重要な知識となります。

さて、問題の解説です

 PKI(公開鍵基盤)を構成するRA(Registration Authority)の役割はどれか。

ア デジタル証明書にデジタル署名を付与する。
イ デジタル証明書に紐づけられた属性証明書を発行する。
ウ デジタル証明書の失効リストを管理し、デジタル証明書の有効性を確認する。
エ 本人確認を行い、デジタル証明書の発行申請の承認又は却下を行う。

エ 本人確認を行い、デジタル証明書の発行申請の承認又は却下を行う。

正解です。
これはまさにRAの本来の役割です。利用者の本人確認を行い、正当な申請かどうかを判断します。

ア デジタル証明書にデジタル署名を付与する。

誤りです。
これはCA(認証局)の役割です。デジタル証明書はCAが署名して発行します。

イ デジタル証明書に紐づけられた属性証明書を発行する。

誤りです。
属性証明書はAttribute Authority(AA)が発行する場合が多く、RAの役割ではありません。

ウ デジタル証明書の失効リストを管理し、デジタル証明書の有効性を確認する。

誤りです。
これもCAの役割です。CAはCRL(失効リスト)やOCSP(証明書のオンライン検証)を提供します。