【情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前2 問22】ウォークスルー
【資格取得応援!】情報処理技術者試験に役立つ「ウォークスルー」を徹底解説!
情報処理安全確保支援士やネットワークスペシャリストの資格取得を目指して、日々勉強に励んでいる皆さん、本当にお疲れ様です! ITの世界は日々進化していて、覚えることもたくさんありますよね。
今回は、システム開発や品質管理の現場でよく使われる、それでいて情報処理技術者試験にも頻出のキーワード「ウォークスルー」について、皆さんの疑問をスッキリ解消できるよう、丁寧に解説していきます!
【出典:情報処理安全確保支援士試験 令和6年度 春期 午前2(一部、加工あり)】
仕様書やソースコードについて、作成者を含め複数人で、記述されたシステムやソフトウェアの振る舞いを机上でシミュレートして、問題点を発見する手法はどれか。
ア ウォークスルー
イ サンドイッチテスト
ウ トップダウンテスト
エ 並行シミュレーション
そもそも「ウォークスルー」って、何だろう?
「ウォークスルー」と聞くと、「散歩?」なんてイメージを持つ方もいるかもしれませんね。でも、ITの世界での「ウォークスルー」は、もっと真剣な意味を持っています。
簡単に言うと、「システムやソフトウェアの設計書やソースコードなどを、開発者ではない複数人で集まって、記述されている内容が意図通りに動くか、机上でシミュレーションしながら問題点を見つけ出すこと」を指します。
まるで、設計図を見ながら「もし、こんな操作をしたらどうなる?」「このデータが入ってきたら、どう処理される?」といった具合に、実際にシステムが動いているかのように頭の中で追体験していくイメージです。
ウォークスルーの背景・経緯:なぜ必要なの?
昔のシステム開発では、実際にプログラムを動かしてみないとバグが見つからない、なんてことがよくありました。でも、それでは手戻りが多く、開発コストも時間も膨大にかかってしまいます。
そこで、「もっと早い段階で問題点を見つけられないか?」というニーズが生まれました。そこで注目されたのが、コードを書く前や、書いた直後の早い段階で、みんなで集まってチェックする手法です。
ウォークスルーは、このような「早い段階での品質向上」を目指す活動の一環として、古くからソフトウェア開発の現場で活用されてきました。バグは発見が遅れれば遅れるほど修正コストが増大すると言われています。ウォークスルーは、そのコストを削減するための有効な手段なのです。
ウォークスルーって、どんな風に進めるの?具体的な事例
では、実際にウォークスルーはどんな場面で、どのように行われるのでしょうか?
例えば、新しく開発するシステムの「ログイン機能」を考えてみましょう。
- 準備
- ログイン機能の仕様書や、すでに書かれたソースコード(の一部)を用意します。
- 参加者は、開発者(作成者)の他に、チームリーダーや別の開発者、品質管理担当者など、複数人(3~5人程度が一般的)が集まります。
- 進行
- 作成者が、仕様書やコードの内容を説明していきます。「ここではユーザーIDとパスワードを受け取って…」「データベースと照合して…」といった具合に、順を追って解説します。
- 他の参加者は、作成者の説明を聞きながら、積極的に質問を投げかけます。「もしパスワードを3回間違えたらどうなりますか?」「ユーザーIDに特殊文字が入ったら?」「同時にたくさんの人がログインしようとしたら?」など、様々なパターンを想定して問いかけます。
- 作成者は、その質問に対して「こうなります」「こういう処理を想定しています」と答えます。もし、想定外のケースや、考慮漏れがあれば、その場で問題点として洗い出されます。
- 参加者全員で、「この処理は本当に正しいか?」「抜け漏れはないか?」「セキュリティ上の問題はないか?」といった視点で議論し、より良い方法がないか検討します。
- 結果の記録
- 見つかった問題点や改善提案は、議事録などにきちんと記録されます。
このように、まるでみんなで推理小説を読み解くように、一歩一歩システムやソフトウェアの振る舞いを追っていくのがウォークスルーです。
ウォークスルーの課題と対策
ウォークスルーは非常に有効な手法ですが、いくつか課題もあります。
- 作成者の心理的負担: せっかく書いたコードに「ダメ出し」されるのは、心理的に抵抗があるかもしれません。
- 時間の確保: 複数人が集まって行うため、そのための時間を確保するのが難しい場合があります。
- 形式的になりがち: ただ集まって読むだけで、活発な議論が生まれにくいこともあります。
これらの課題に対する対策としては、以下のような点が挙げられます。
- ポジティブなフィードバック: 問題点だけでなく、良い点も評価するなど、参加者全員が建設的な雰囲気で議論できるような工夫が必要です。
- 目的意識の共有: 「欠陥を見つけること」だけでなく、「より良いものを作る」という共通の目的意識を持つことが重要です。
- 少人数・短時間で実施: 大規模になりすぎず、目的を絞って短時間で実施するのも効果的です。
- ファシリテーターの存在: 議論を円滑に進めるためのファシリテーターを置くことも有効です。
ウォークスルーの今後の動向
近年は、アジャイル開発のような開発手法が広まり、より短いサイクルで頻繁にフィードバックを行うことが重視されています。ウォークスルーも、そうした流れの中で、より効率的で柔軟な形に進化していくと考えられます。
例えば、オンラインツールを活用したリモートでのウォークスルーや、より自動化されたコードレビューツールとの連携なども進んでいくでしょう。しかし、どんなにツールが進化しても、人間の目でしか見つけられない、設計思想の根本的な問題や、利用者の視点に立った使いやすさの検証といった部分は、ウォークスルーの価値として残り続けるはずです。
まとめ
ウォークスルーは、システムやソフトウェアの品質を向上させるための非常に有効な手法です。情報処理安全確保支援士やネットワークスペシャリストを目指す皆さんにとって、この概念はシステム開発の現場だけでなく、試験対策としても非常に重要です。
ぜひ、今回の記事でウォークスルーのイメージをしっかり掴んで、今後の学習や実務に活かしてくださいね!
問題解説
それでは、先ほどの記事の内容を踏まえて、以下の問題を解説していきましょう。
【問題】
仕様書やソースコードについて、作成者を含め複数人で、記述されたシステムやソフトウェアの振る舞いを机上でシミュレートして、問題点を発見する手法はどれか。
ア ウォークスルー
イ サンドイッチテスト
ウ トップダウンテスト
エ 並行シミュレーション
【解説】
この問題は、ソフトウェアの品質管理手法に関する知識を問うものです。一つずつ選択肢を見ていきましょう。
- ア ウォークスルー
- 記事で詳しく解説した通り、仕様書やソースコードを複数人で机上でシミュレートし、問題点を発見する手法です。まさに問題文の記述に合致します。
- イ サンドイッチテスト
- 結合テストの手法の一つです。上位モジュールと下位モジュールを結合し、中間モジュールからテストを開始します。つまり、プログラムを実際に結合してテストを行う手法であり、机上でのシミュレーションとは異なります。
- ウ トップダウンテスト
- 結合テストの手法の一つで、上位モジュールから下位モジュールへ順に結合してテストを行う手法です。これもプログラムを実際に結合してテストを行う手法であり、机上でのシミュレーションとは異なります。
- エ 並行シミュレーション
- これは通常、既存システムと新規システムを並行稼働させて、両者の結果を比較することで、新規システムの正確性を検証する手法です。主にシステム移行時などに用いられ、机上でのシミュレーションとは異なります。
以上のことから、問題文の記述に最も合致するのは「ウォークスルー」です。
【正解】ア
情報処理技術者試験では、このように各用語の意味を正確に理解しているかが問われます。今回のウォークスルーのように、一見難しそうなキーワードも、具体的なイメージを持って理解することで、試験対策だけでなく、実際の業務にも役立つはずです。
皆さんの学習を心から応援しています!頑張ってくださいね!