VoIPシーケンス・待ち行列【基本情報技術者試験 平成29年度 秋期 午後 問4(ネットワーク)】

基本情報技術者試験 平成29年度 秋期 午後 問4(ネットワーク)

問4 コールセンタ設備の構成案及び必要となるオペレータ数の検討に関する次の記述を読んで、設問1,2に答えよ。

 X社のコールセンタでは、顧客からの問合せの電話に対して30人のオペレータで処理を行っているが、”電話で待たされる”という顧客からの意見が多く寄せられている。この度、顧客が電話で待たされる時間の短縮を目的に、既存のコールセンタの設備とオペレータ数を見直すことにした。検討の要件とコールセンタ設備の構成案は、次のとおりである。

【検討の要件】

(1)コールセンタでは、IPをベースにして拡張が可能なVoIP(Voice over Internet Protocol)を採用する。

(2)コールセンタに着信があってからオペレータと通話を開始できるまでの平均待ち時間を、問合せが最も多い時間帯(以下、ピーク時という)においても、20秒以下になるようにオペレータを増員する。

【コールセンタ設備の構成案】

 VoIPサーバ群は、顧客情報サーバ、コールサーバ及び着信分配情報サーバで構成する。オペレータ席には、それぞれ電話端末とPCを設置する。VoIPサーバ群と、音声ゲートウェイ及びオペレータ席との間はレイヤ3スイッチで接続する。

 コールセンタ設備の構成案を、図1に示す。

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 顧客情報サーバは、過去の問合せ内容の検索や、顧客とのやり取りを記録するために利用される。コールサーバはVoIPの制御を行い、音声ゲートウェイから電話の接続要求があると、オペレータ席にある電話端末とPCの状態(以下、オペレータ席の状態という)を管理している着信分配情報サーバに問い合わせて、接続要求待ちのオペレータ席の電話端末へ接続する。オペレータ席の状態には、接続要求待ち、通話中及び結果記録中の状態があり、着信分配情報サーバは各オペレータ席がどの状態にあるかを認識している。

 顧客からの通話要求をオペレータ席の電話端末に接続するシーケンスを、図2に示す。

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設問1 図2中の( )に入れる正しい答えを、解答群の中から選べ。

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a:

顧客からの通話要求をオペレータ席の電話端末に接続するシーケンスに関しては、問題文「コールサーバはVoIPの制御を行い、音声ゲートウェイから電話の接続要求があると、オペレータ席にある電話端末とPCの状態(以下、オペレータ席の状態という)を管理している着信分配情報サーバに問い合わせて、接続要求待ちのオペレータ席の電話端末へ接続する。」が参考になります。

この記述内容から、「音声ゲートウェイ→(接続要求)→コールサーバ→(問合せ)→着信分配情報サーバ」「コールサーバ→(接続)→電話端末」のシーケンスであることが読み取れます。

設問2 次の記述中の( )に入れる正しい答えを、解答群の中から選べ。

【オペレータ席の状態と問合せの処理件数及び処理時間】

 接続要求待ちの状態にあるオペレータ席の電話端末に接続要求があると、オペレータが顧客と通話を開始することによって通話中の状態になる。通話が終了すると結果記録中の状態となり、オペレータはPCから顧客情報サーバに、その結果の記録を行う。結果の記録が完了すると、接続要求待ちの状態に戻る。

 X社のコールセンタが想定する問合せの処理件数及び平均処理時間を表1に示す。1人のオペレータが1回の問合せに応対する通話時間と、結果記録時間の合計を処理時間とする。想定する平均処理時間は(b:6)分であり、コールセンタのピーク時における平均着信間隔は(c:10)秒となる。

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b:6

処理時間については、問題文から「処理時間=通話時間+結果記録時間」となることが分かります。

したがって、平均処理時間=平均通話時間(4分/件)+平均結果記録時間(2分/件)=6分/件」となります。

c:10

平均着信間隔については、「ピーク時の着信件数=360件/時」から1時間に360件の着信があるということです。

したがって、1件ごとの着信間隔は「1時間(3,600秒)/360件=10秒」となります。

【必要なオペレータ数の検討】

 コールセンタに顧客からの着信があってから、オペレータと通話を開始できるまでの平均待ち時間の算出には、待ち行列理論を使う。窓口数sのM/M/sモデルに表1の条件を適用すると、オペレータ数と平均待ち行列長の関係は、表2のようになることが分かっている。

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 平均到着率(平均着信間隔の逆数)をλとすると、平均待ち行列長Lと平均待ち時間Wとの間には、次のリトルの公式が成立する。

  λ × W = L

 リトルの公式と表2を用いると、ピーク時の平均待ち時間を20秒以下にするために必要なオペレータ数は最小(d:42)人となる。ここで、接続要求待ちの状態にあるオペレータ席が一つ以上ある場合に、コールセンタに顧客からの着信があってからオペレータ席の電話端末に接続要求を行うまでの時間と、オペレータが接続応答を行ってから顧客と通話を開始できるまでの時間は、無視できるほど短いものとする。

d:42

「λ×W=L」に値を入れていきます。

λ(平均到着率)は平均着信間隔(10秒)の逆数なので「1/10=0.1」です。

W(平均待ち時間)は目標値である20秒とします。

L(平均待ち行列長)は「L=0.1×20=2」となります。

したがって、待ち時間を20秒以内に抑えるには、平均待ち行列長を2以下にする必要があることになります。

表2から、平均待ち行列長が2以下になるには、オペレータ数が42人以上必要であることが分かります。

b、cに関する解答群

ア 3  イ 4  ウ 5  エ 6  オ 7

カ 8  キ 9  ク 10  ケ 11  コ 12

dに関する解答群

ア 40  イ 41  ウ 42  エ 43  オ 44

【出典:基本情報技術者試験 平成29年度 秋期 午後 問4(一部、加工あり)】

https://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/mondai_kaitou_2017h29_2/2017h29a_fe_pm_qs.pdf